長い黒髪が美人の条件

2011.03.31

恋の絵巻の『源氏物語』で、主な女君たちが早死にするのも、あるいは彼女たちの白髪頭を、読者や光源氏に見せたくないという紫式部の親心のようなものが働いてのことではなかったか。『源氏物語』の主な女君たちの死年齢は、夕顔十九、葵の上二十六、藤壷三十七、六条御息所三十六、紫の上四十三(別の計算によると四十二)。いずれも数え年なので、満でいうとひとつは若くなる計算だ。紫の上の四十三歳などは、白髪の遅い人ならまだオール黒髪のぎりぎりの年齢で、いずれの女君たちも髪の美しいうちに死んでいるということがわかる。このあたり万葉の奈良時代と違い、美貌至上主義の平安時代らしい。髪は女の命とは後世にもいわれることだが、長い黒髪が美人の条件だった平安時代はなおさらで、『医心方』の「美容篇」も、髪から始まる。養毛発毛法に加え、傷んだ髪やコシのない髪を治す処方など、今と変わらぬ髪の悩みに対する治療法に続き、「白髪を治して黒くする処方」も挙げられている。
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