「普通の人生」のモデルを使って社会統合を進める国家

2011.12.30

住宅システムは国家と社会を媒介し、国家が社会を統合するための手段として用いられる。戦後日本の福祉国家は、住まいに関わる普遍的な社会権という概念に関心を示さず、住宅保障の領域では限定的な役割しか果たさなかった。政府の住宅政策は中間層の持家取得促進に傾き、低所得者のための住宅供給は微量のままであった。しかし、住宅保障の弱さは国家が住宅に無関心であることを含意しない。日本が採ったのは、住宅保障を制限する一方、住宅所有を促進するシステムを組み上げ、「普通の人生」のモデルを使って社会統合を進める方針である。

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持家取得の増大は標準パターンのライフコースを歩む世帯を増やし、社会安定に寄与すると考えられた。めざされたのは、経済が拡大し、中間層が増え、持家が増加し、世帯の保有資産が増え、そしてメインストリームがいっそう拡大する、という道筋の敷設である。住宅所有の普及に依存し、持家世帯をコアに据えて社会統合を構築しようとする戦略が日本の福祉国家を特徴づけている。持家社会は不変ではありえない。